行政事件というと,イメージがピンときませんが,誤った行為,処分,支出などを行った国や自治体を相手に訴訟をすることです。
当事務所がいままでに受任した事件は,以下があります。
例えば,障がいのある方,子どもたちに性教育をする学校がありました。障がいのある方は性加害者,又は性被害者になることが多かったためです。その学校は,性教育をわかりやすくするために,わかりやすい言葉で,わかりやすい教材で真面目に教育をしていました。ところが,それを聞きつけた東京都議会議員と東京都教育委員会が,卑猥な性教育をしているなどと勝手に難癖をつけて,教材を強制的に回収し,先生たちを強制的に異動させました。先生たちは,東京都議会議員及び東京都教育委員会に対して,賠償を求めて,国家賠償請求を行いました(最高裁で勝訴確定)。
また,次のような例もあります。保育園のニーズが高いのに,一方的に住民の保育園利用をとめ,保育園を閉園にした事例がありました。市に対して,保育園を一方的に閉園にすることについての違法性・不法性を訴えました。市のお金の使い方に問題があるとして,監査請求というものを行いました。 このように国や自治体等が誤った行為をした場合にそれを正すのが行政訴訟です。
行政も間違いをします。「言うべきは言う」「間違っていたらそれにきちんと声をあげる」。簡単そうで難しいことですが,当事務所は,行政に対して,きちんと自分の声を届けたい,訴えたい,伝えたいという方のサポートをしていきたいと思います。
行政事件の処理の経験がある弁護士は決して多くありません。それは,手間がかかるからです。裁判所も「行政がやることに間違いはない」と思っている節すらあります。
しかし,当然のことながら,行政がやることは万全ではありませんし,行政の対応は往々に画一的な対応に終始し,住民からみると,非情な対応に映ることすらあります。個別具体的な対応に消極的といえるかもしれません。また,お金の使い方などもよくわからないと思う時があります。
そのような時に,行政に対してきちんと立ち向かうことが必要です。行政事件を敬遠する事務所が多いなか,当事務所は,約20年以上にわたって,数多くの行政事件を手掛けてきました。国家賠償請求事件,住民訴訟事件,取消訴訟事件など経験豊富な事務所であるといえます。行政事件を担当することは,国民主権・基本的人権のために重要であると考えられるため,当事務所の弁護士は設立以来,一貫して行政事件を担当してきました。
当事務所は,これからも行政事件のサポートを精神誠意させていただきます。
行政事件のイメージを持ってもらうために,実際に当事務所が扱った具体例として,冒頭で紹介したものを含めて,以下の例があります。
①日野市内の丘陵地に旧陸軍の掘った巨大な地下壕があり,その陥没事故で住宅が破壊されてしまいました。国の対応・管理に不備があると考え,訴訟提起を行い,被害者の権利を守りました。
②東京都檜原村では,談合があり,公金を不正に支出していることが疑われたため,透明性のある会計を目指すため,檜原村の村民が立ち上がり住民訴訟(所属している自治体の公金の支出などに違法または不当性がある場合にそれを追及する訴訟)を起こしました。
③2000年ごろ,東京都日野市にある七生養護学校にて,突如として,東京都議会議員,東京都教育委員会が訪れ,性教育に関する教材などを強制的に没収したことがありました。七生養護学校の先生からすれば,自分たちの行っていた性教育に何ら後ろめたいことはなく,直前に行われた研修会などでも賞を取っていたこともあり,なぜそのようなことが行われたのかが皆目検討がつきませんでした。
けれども,その後,七生養護学校の教員は(普通の異動とは考えにくい)大量の異動の辞令が出て,七生養護学校が行ってきた性教育は壊されてしまいました。この話をきいた弁護士たちは,憲法で規定する「教育権(憲法26条)」が破壊されたとして,国家賠償請求を東京地方裁判所に起こしました。そのなかで,教育に関して研究をしていた学者や,障がいの問題に造詣の深い専門家などから話を聞いたり,証人尋問をしてもらうなどしました。また東京都議会議員や東京都教育委員会の担当者を証人として呼んで,尋問するなどしました。
訴訟提起から最高裁まで10年近くかかりましたが,勝訴判決で終わっています。なお,東京都七生養護学校事件については,七生養護「ここから」裁判刊行委員会編『かがやけ性教育!最高裁も認めた「こころとからだの学習」』を出版していますので,ご覧ください。
④2015年ごろ,東京都日野市において一方的に住民の保育園利用をとめ,保育園を閉園にするという連絡がなされました。親御さんたちから,保育園に通わせたいとご相談を受けました。当事務所の弁護士は,保育園の設置,閉園などを行う法律,規則,ルールなどを徹底的に調査しました。そのうえで,市の都合で,保育園を閉園にすることは問題にあると思われ,市の公金の使い方に問題があると考え,日野市の監査委員に対して,公金の使い方を改めて検証してもらうべく,監査請求を行いました。監査請求の結果は必ずしも親御さんたちが望む結果ではありませんでしたが,その後も,市と継続的な話し合いをしました。