取り扱い業務

障がい者相談

障がいをお持ちの方々のサポートは,まずは医療あるいは福祉専門職の領域だと思います。

 しかし,危機介入の場面での弁護士の役割には大きいものがありますし,援助と管理の対象となりがちな障がい者に対する権利擁護の視点はより鮮明であると思います。
 障がい者の方々に対する日常的支援のなかに弁護士が分け入っていくことはとても有意義なことです。  大多数の弁護士は,障がいのある方と接しても,障がいゆえの特性に思いを致すことはありません。面倒な人と追い返すか,形だけの事件処理をするにとどまり,当事者本人の力づけまでには至りません。
 当事務所は,弁護士は社会資源の一つであると考えます。福祉関係者と連携して,障がいをお持ちの方々に対して法的アドバイスをし,権利擁護に努めてまいります。「生きづらさ」に対する感受性を持ち,相談しづらいことでも気軽に相談できる事務所として,皆様のご相談に真摯に対応させていただきます。

知的障がいや精神障がいのある方による刑事事件,精神障がいを理由とする入店拒否,非自発的入院の問題,障害年金,債務整理,金銭管理,障がい者の方々の抱える困難は様々です。
 障がいを持つ方の事件においては,ご本人との信頼関係の構築,問題の原因となる障がい特性の把握,福祉関係者との連携が必要となることが多いと思います。また,当事者の親が高齢であったり,障がい者であるなど,当事者を取り巻く関係者の環境調整を必要とすることもあります。たとえば,高齢親については成年後見制度を利用するなど多角的な支援が必要となるケースも少なくありません。
 当事務所の弁護士は,障がい者の方を当事者とする事件の経験も多く,福祉関係者との連携事例を多く持っています。ご相談いただければ,誠実に事件処理させていただきます。

費用については,当事務所の報酬についてのページをご覧ください

報酬のページ

①軽度知的障がいのある方の窃盗事件
 軽度知的障がいのある方の窃盗事件を検討してみます。
 この方は,精神障害のある親と同居していますが,住居の提供以外の面では全く金銭的な援助は受けておらず,ときには暴力をうけることもあります。にもかかわらず,いままで全く障がい者支援サービスを受けたことはないという設定にします。今まで,窃盗事件を起こすことは何回かあり,罰金をうけたこともあります。
 さて,この方は,刑事事件としては,今度こそ裁判にかかる可能性が極めて高いのですが,当事務所であれば,次のような弁護方針を検討します。  まず,この方が,知的障がいがありながら,これまで障がい福祉サービスを利用したことがないこと,経済的に自立しておらず生活費も十分ではないことが問題であるように思われますので,障がい者支援サービスの利用ができないかを検討します。この点,弁護士は福祉的な支援については素人ですから,必要に応じて社会福祉士や精神保健福祉士等専門職の力を借り,支援計画を策定しもらったり,検察庁や裁判所に提出するための更生支援計画という書類を作成してもらうこともあります。  その結果,例えば,親元を離れてグループホームに入所し,日中は作業所に通って活動をする,経済的には生活保護を受けて自立するという計画となったとします。弁護士は,その計画書を検察官に提示し,不起訴にすることを求めていくことになります。
 その結果,無事に不起訴となれば刑事事件としては成功です。また,その後は,支援計画を実行しますので,本人の生活環境の改善に直結することにもなります。

②長期入院を強制されている精神障がい者の支援
 統合失調症があり,強制的に入院させられ,10年もの間入院をし続けた方のケースを検討してみます。この方は,興奮すると暴力的になる傾向があり,暴れて手が付けられなくなった家族が通報して,入院につながったという前提で考えてみます。
 病院としても,本人を退院させたいと思っており,本人も退院を希望しているのですが,家族が引き取りを拒絶しており,生活する場所が確保できないため,入院が続いてしました。
 さて,ここでは退院請求という手続きが考えられます。入院には,任意入院,医療保護入院,措置入院の3種類があり,そのうち医療保護入院と措置入院は非自発的入院と呼ばれ,本人の意思に基づかずに入院させるのですが,この入院が不当であるとして,入院決定という行政処分に対して不服申し立てをする手続きです。
 他方,このケースでは,病院側も退院させたいと考えているのですが,戻す場所がないため,退院が実現できないという実情がありますので,グループホームや単身アパートを手配し,障がい支援サービスも受けて自立した生活の環境調整をすれば,病院側が任意に退院させるということも考えられます。この場合も,弁護士は素人ですので,福祉の専門職と連携して,環境調整に当たってもらうということがありえます。
 また,入院の必要あるけれども,面会や電話,一時外出などが過剰に制限されているというケースもありますが,このような場合には,処遇改善を求めることもできます。

③後見制度利用による権利擁護
障がいをお持ちの方は,グループホームを利用したり,外出支援を利用したりするなどして,福祉の事業所を利用することがありますが,これは,あくまで,ご本人と事業所との直接の契約です。障害のために判断能力が失われている方については,成年後見人を選任したうえで,成年後見人が事業所と契約すべきことになります。もちろん,事実上,本人が契約し,保護者が契約書にサインするという形がとられることが多く,それで問題になることはほとんどありませんが,それは本来法律が予定しているものとはいえません。
 また,成年後見制度というと,財産管理や契約行為の代理という役割が大きいように思われますが,根本的にはご本人の意思決定支援と権利擁護が仕事といえます。障がいをお持ちの方が自らの意思や権利を実現するために,支援される客体としてではなく,主体的に支援を求めていくために,後見制度は非常に有効な制度です。
 例えば,グループホームを利用している知的障がい者がいるとします。グループホームは通常複数人が共同生活をしていますので,トラブルも発生します。また,障がいゆえにグループホーム内でのルールが守れないということもあります。そうすると,グループホームとしては,問題のある利用者であるとして退去を求めたいと考えることもあるでしょう。では,もしも,本人がそれでも長年居住してきたグループホームにいたいと考えた場合に,本人はグループホームに対して権利主張をできるでしょうか。あるいは,不幸にもグループホームを出ていかざるをえなくなった場合に,本人は次のグループホームを探したりできるでしょうか。もし,家族がいれば,自宅に戻ることもできますが,それでいいのでしょうか。このような本人の権利を守るべき場面においてこそ成年後見人は役に立つといえます。
 障がい者が自立した生活を送り自己実現を果たしていくうえで,成年後見制度は大事な役割を持つと考えます。ぜひ検討してみてください。