現在,多くの消費者被害が生じています。消費者被害といっても,様々なバリエーションがあります。
例えば,家でくつろいでいたら,いきなりインターホンの音が鳴って,不要な物をついつい買わされてしまった,購入した物を返却したという訪問販売は代表的な事例です。
また,次のような劇場型詐欺事例もあります。「現在,当社はA社の株式を探しております。500万円で購入するので,お持ちではないですか?」と,X社を名乗る男性から電話がかかってきて,当然持っていないので,電話を切りました。そうしたところ,その数日後に,今度はY社を名乗る女性から電話があって,「ただいま弊社はA社の株式を買ってくださる方を探しています。100万円で売却しますのでもしよかったらいかがですか」といわれ,Y社に100万円を支払ってしまった。支払後は,全く連絡が取れなくなったというものです。
これらはいずれも消費者被害と呼ばれますが,これらは弁護士が扱う職域の中では,専門性が高い分野であるといわれています。それは,法律の改正が激しく,また様々な特別法があることから(消費者契約法,割賦販売法,特定商取引に関する法律,金融商品取引法など),最新の法的知識の正確な理解が必要だからです。相手の所在特定,相手の財産の探索なども必要になります。
消費者事件の事件処理には,最新かつ正確な法知識と,豊富な経験が必要であるためです。
消費者事件に巻き込まれてしまった場合,詐欺の相手が誰かわからないことがあります。その場合には,相手の特定が必要です。
また,相手がわかっても,相手が財産を持っているかどうかわからないこともあります。
裁判もののドラマを見ていると,主人公が勝訴判決を勝ち取ると,それでドラマが終わります。判決言い渡しによって,めでたしめでたしというわけですが,日本の法律では,勝訴判決をもらっても,自動的にお金が降ってくるわけではありません。勝訴判決が出た場合,常識のある相手方であれば,お金を払ってくれますが,消費者事件の相手方の場合には,そもそも相手が任意にお金の支払いに応じてくれないことが少なくありません。そのため,財産の所在をあらかじめ調査しなければならないのです。
また,消費者事件の場合には,法改正が頻繁な分野であり,正しい法知識が要求されます。
当事務所は,設立から20年以上経過しているので,多くの紛争解決事例の実績があります。消費者事件は一般的に専門性が高い分野と言われていますが,日常的に研鑽を積んでいます。また,多摩地域の弁護士会には,消費者問題を専門的に研究・議論する「消費者委員会」がありますが,当事務所の弁護士もこの委員会に関わっています。
事案によっては警察に相談すべき場合ももちろんありますが,警察に相談すべきかどうか,また,警察に相談した場合でも,被害金の返還は別途行わなければなりませんので,弁護士の助力の必要が大きい分野といえます。
①クーリングオフの事例
まず,自宅に販売員が突如として来訪して,不要なものを購入させられたので,契約を解除したいと考えている事例を考えてみましょう。
この場合,すぐに相手の業者に内容証明郵便を送り,クーリングオフを主張します。クーリングオフとは,契約した後,頭を冷やして(Cooling Off)冷静に考え直す時間を消費者に与え,一定期間内であれば無条件で契約を解除することができる特別な制度です。特定の取引の場合,業者は,消費者にクーリングオフについての説明や申込み内容または契約内容を記述した書面(申込書面または契約書面)を渡さなければなりません。書面を渡したときから,8日以内(取引類型によって期間は異なります)に取引を解除したいと連絡をすれば契約を解除することができます。
ただし,業者が渡さなければいけない書面は法律で決まっており,法律で要求された内容が書かれている書面(法定書面)を交付しない場合には,8日間のカウントは始まりません。このような場合にはクーリングオフを主張することが可能です。その結果,お金を回収することができ得るでしょう。
②劇場型詐欺の場合
自宅を数人の人が突然訪問して,「電気系統が古くなっていてこのままだと火事になってしまう,一刻も早く工事する必要がある」と言われて,不安になってしまい,数百万円の不要な工事をしてしまった場合を考えてみましょう。
クーリングオフ制度を使うこともできる場合もあるかもしれませんが,不法行為(民法709条)にあたるとして,訴訟提起をする場合も少なくありません。その結果,和解や勝訴判決を得ることができ,相手から金員を回収できる場合があります。
③お金を振り込んで以降,相手と連絡がとれなくなってしまった場合
ついつい業者のセールストークに乗せられ,お金を振り込んでしまったのですが,振込以降,突然,相手と連絡が取れなくなってしまった例を考えてみます。お金を振り込むや否や,突如として連絡が取れなくなる例は少なくありません。
その場合,会社の情報を調査します。名刺に書かれている住所に足を運びます。あらかじめ聞いている電話番号をもとに,調査を開始します。他にも様々な手法を用いて,会社の情報を調べます。調査のテクニックを全てここで書くことは控えますが,相手と連絡が取れなくなっている場合でも,調査を怠らずにやれば,相手の所在を突き止め,お金を回収できる場合があります。