労働は,日々の生活を営むための手段であり,生きるための権利として憲法によって保障された国民の権利です。
労働者は労働をし,使用者は労働に応じて賃金を支払います。ですから,両者は本来対等の立場にいるはずです。しかし,実情を見れば,使用者のほうが優位であり,労働者が声をあげることは難しいです。
賃金の未払い,サービス残業,不当解雇,雇い止め,セクハラ,パワハラ,労災事故等,職場で起きる様々な問題に,私たち弁護士は皆さんと一緒に取り組みます。
労働事件は多種多様であり,解決方法,とるべき法的手段も様々です。
例えば,サービス残業の問題があります。労働者の就業時間は,雇用契約や就業規則によって具体的に定められており,8時間を超えて法定の就業時間外に労働をさせた場合,使用者は25%以上の割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。この未払残業代をいかにして回収するかは容易ではありません。交渉によって回収する,訴訟提起する,あるいは労働審判をおこす,はたまた労働基準監督署に働きかけて支払いを指導してもらうなど,手段は様々です。また,残業時間の特定にはタイムカードが最も重要な証拠ですが,会社が素直に提出してくれるかはわかりません。場合によっては,証拠保全の手続きをとる必要もあります。
また,不当解雇の事案では,解雇に合理的な理由がなければ,当該解雇は,解雇権の濫用として無効ですので,当然出勤できるわけですが,通常,会社側は解雇に理由を付して会社に復帰することを認めないことが多いです。そうすると,雇用されていることの確認を求めて,訴訟か労働審判をすることは検討するにしても,当面の給与は保証されません。そこで,仮の地位を定める保全手続きをとることも検討する必要があります。また,あくまで解雇無効にこだわるのか,一定の解決金を支払わせて和解するのかについての判断もする必要があります。
このように,労働事件において,とるべき手段は一様ではありません。当事務所は,労働事件も多数経験があります。事案に応じた対応をご相談させていただきます。
①残業代請求
Aさんは,B社の従業員であり,営業職についています。勤務時間は,9時~17時とされていますが,実際には,外回りをして夜遅くに会社に戻りさらにデスクワークをしている勤務状況で,一日に12時間以上は働いています。ある日,Aさんは,インターネットを見ていて,時間外労働に対しては残業代が発生することを知りました。そのことを会社の社長に行ったところ,うちは残業に対しては一律営業手当として3万円を支給することにしているといわれました。確かに,給与明細には営業手当という項目があります。Aさんは,残業代を請求できるのでしょうか。Aさんは,B社に入社したとき,契約書を作成していませんし,労働条件通知書を渡されたこともありません。
まず,時間外労働については,割増手当が発生します。会社は,営業手当として一律支給しているとの立場です。会社の言い分は,いわゆる固定残業代といわれるものなのですが,固定残業は,契約書や就業規則で明文化されている必要があるところ,B社では,契約書も労働条件通知書もないということなので,固定残業代との主張は成り立ちません。Aさんは,法定時間外労働については,残業代の請求ができるということになります。
さて,B社に対してどのような手段をとることができるでしょうか。弁護士が受任した場合,労働時間の立証手段を確保する方法を検討します。本来,会社にはタイムカードの保管義務がありますので,会社にタイムカードの開示請求をすることが考えられます。
また,会社が証拠隠滅を図る恐れがあれば,証拠保全申し立てをすることも考えます。こうして,タイムカードを確保することができれば,残業時間を確認し,残業代を算出し,B社に請求します。B社が任意に応じなければ,労働審判又は民事訴訟を提起することになります。
②雇止め
Bさんは,C商事に勤務しています。2年契約の契約社員であり,今まで3回契約期間を更新したことがあります。Bさんは,4回目の更新時期を控えていましたが,会社の上司から,次の更新はしない予定であると告げられました。Bさんは会社を辞めざるをえないのでしょうか。
このケースは,いわゆる「雇止め」とよばれるものです。労働契約法19条により,有期契約労働者が契約更新の申し込みをした場合又は期間満了後遅滞なく有期労働契約の申込みをした場合・・・には,契約更新を拒絶することは違法とされます。
本件は,過去3回の更新実績がありますので,更新拒絶は違法とされる可能性が高いということになります。そうすると,労働契約は従前の契約内容と同じ条件で更新されたこととなります。
しかし,実際には,会社から出勤を拒否されてしまった場合には,出勤することは難しいでしょう。この場合,やはり,労働審判又は訴訟提起をして,地位の確認請求及び未払い賃金の支払い請求をすることになります。
③労災
Dさんは,E社の工場で勤務していましたが,ある日,機械の不具合で事故にあい,大きなけがを負ってしまい,働くことができなくなりました。この場合,Dさんはどのような補償を受けられるでしょうか。
このケースは,いわゆる労災の事案です。労働者が「業務上の事由」で負傷した場合には,労災保険法に基づく補償が受けられます。また,労働者の安全に配慮する義務が使用者にはありますので,会社に対して,民法上の損害賠償請求をすることも可能です。ケースバイケースですが,労災の給付は補償の範囲が限定されるので,まずは労災給付を受け,その後労災保険でカバーされなかった損害を賠償請求するというのがオーソドックスなやり方です。