HOMEへ バックナンバー 2003年10月3日  
 
★11月1日開催・福島清彦氏の講演に期待する
国際的視野からの「福祉型社会の提言」
弁護士 窪田 之喜
新刊『ヨーロッパ型資本主義』を読んで
 『ヨーロッパ型資本主義』という新書本に注目があつまっている。「アメリカ市場原理主義との決別」という副題からして、生きのよさを感ずるし期待をそそられる。読んだ後、その期待に十分こたえてくれる本であった。
 私は、同僚の木村弁護士の紹介で知った。木村さんや事務所の仲間と相談して、この秋、私どもの事務所5周年企画と称して、福島氏の講演会を是非もちたいと考えた。手紙を書いてお願いすると、快くお引き受けいただくことができた。別掲の講演会案内のとおり11月1日にその期待が実現するのである。
アメリカ市場原理主義との対比でヨーロッパ社会を検証
 この本は、昨年10月出版された講談社現代新書である。著者の福島清彦氏福島氏は、野村総合研究所ワシントン事務所長、同ヨーロッパ社長を経て、現在、野村総合研究所主席エコノミストをされている。財界系のシンクタンクのトップのお1人と言ってよいと思う。10数年に及ぶ米欧生活と長い実証的研究をふまえて、市民向けのわかりやすい言葉で書かれた本である。内容は、50年のヨーロッパの歴史をふまえていて史的興味に答えてくれる。私などは、60年代のヨーロッパ観が突然変わる思いであった。この歴史をふまえて、市場原理主義で暴走する現在アメリカ型経済と対比して「新しい福祉社会」を描き出す筆致は、実に骨太く且つシャープである。
副題「アメリカ市場原理主義との決別」の切迫性と先に見えるもの
 この本に接して、感ずるところが多かった。一言で言えば、今の、米国型の市場原理主義の暴走は、このままでは世界をつぶす。新しい福祉型社会を目指すことに資本主義の未来があり、既にヨーロッパの大きな実験がすすんでいる、という研究報告である。「弱肉強食の米国流よ、さらば!」とまで言い切っているのは、その選択とハンドルの切り替えにあまり多くの時間が与えられていないという切迫感があるからであろうか。
別著『暴走する市場原理主義』にみるアメリカ経済の実態
 福島氏の多くの著作の中で、この本に直接しているものとして『暴走する市場原理主義』(ダイヤモンド社・2000年2月刊)を紹介したい。「本書の構成と目標」と題して以下のような案内がなされている。第1章では、アメリカの国内経済が市場原理主義の暴走で、想像を絶する借金を抱え、破産状態になっていることを解明する。第2章では、アメリカの市場原理主義は、世界経済でも暴走し、国際金融市場をカジノ市場に変えてしまった。・・カジノ経済の犠牲者は、アジアの発展途上国である。分析的にこうした論点をえぐり出し、第3章以下で、市場原理主義を支える経済理論、市場原理主義を唱えなる一方で「アメリカ経済は政府による介入と保護で成り立っている」という実態を解明する。最後に、「日本の改革がうまくいかない原因の一つは、多くの論者が、依然、アメリカ製市場原理主義に呪縛されているからである。」と指摘し、「市場万能にとらわれない、社会原理に関する基本観を確立することが先決である」と指摘する。この指摘が、次の著作『ヨーロッパ型資本主義』で、十分展開されていることを読みとることができると思う。
日本経済、社会の行く末に「新しい福祉型社会」を見据える
 日本の多くの国民は、今、閉塞感におそわれているように思う。旧来型の土建国家か「改革」かと問題をたてれば、だれもが「改革を」と答えるに決まっている。すでに問いの中に答えがある、ごまかしの問いあるいはごまかしの「選択」なのだから。
 しかし、世界の知恵は「新しい福祉型社会を」もう一つの選択肢として提起している。そのことを私は多くの方々と聞いてみたい、語ってみたい。そして断言できるのであるが、そこには私たちの青い鳥・「日本国憲法」の姿が見いだされるに違いない。
◆これは「ひろばニュース」9月号にも掲載されています。

●福島清彦
1944年生まれ。一橋大学大学院経済研究科修士課程終了。国際経済論専攻。野村総合研究所ワシントン事務局長、同ヨーロッパ社長を歴任。現在は、野村総合研究所主席エコノミスト。著書に「ヨーロッパ型資本主義」(講談社現代新書)のほか、「太平洋の時代」(東洋経済新報社)、「日米欧世界」(筑摩書房)、「暴走する市場原理主義」(ダイヤモンド社)など。

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