←前のページ 次のページ→   2004年7月1日  

3月25日に、日野・市民自治研究所基本課題研究会の第2回研究会として自主課税権問題を取り上げました。

私は、その前提となる地方財政改革議論の概要と基本視点について、おおよそ次のような報告をさせていただきました。1から3の構成です。
1、「平成16年度地方財政計画にみる深刻な地方財政」をみてみました。
 総務省が、毎年2月頃発表する、全国の自治体財政を(歳入歳出見込額)トータルしその年度の地方自治体財政見込額をまとめた「地方財政計画」の数字です。
 総額   84兆6669億円
 歳入面  地方税32.3兆円、地方譲与税1.14兆円、地方交付税 17.9兆円
  以上の一般財源が51.5兆円( 一般財源比率60.8%)、地方債14.1兆円(地方債依存度16.7%)
  財源不足合計 14兆1498億円
 大きな資金不足をこれまでどこから調達しているかというと、交付税特別会計借入金という形の借金(平成16年度末残高見込み50.2兆円)、平成13年以降、臨時財政対策債(その平成16年末残高見込み14.4兆円)という謝金です。地方交付税は、所得税・法人税・酒税・消費税・たばこ税の一定割合をもってあて、この税を配分していたはずなのに「地方交付税は税ではなく、借金を配分する制度に変質しはじめている」と批判される実態です。 地方財政が著しく悪化した原因については、地方自治体の放漫経営と批判する意見もあるのですが、実際には、不況期の減収カバー、国の要請による公共事業の実施、国の決定による一方的減税策の為の借り入れなど、国政のしわ寄せの面が大きいのです。
 その借金ですが今や、地方債の合計は(平成16年度末見込み)204兆円、中央政府と自治体の債務は700兆円を越えるありさま。その責任追及はともかく、国民・市民にとって重い数値であることを見ないわけにはいきません。
2、地方税財源をめぐる議論の概要を紹介しました。
●国(中央政府のこと)と地方の税源配分のアンバランス
 税収の面では、国税と地方税の総額は、3:2で国が多いのです。しかし、支出でみるとは、国の支出:地方の支出は、3:5になっています。国が地方自治体を通じて支出するいわゆる「移転的支出」が、38.7兆円もあって支出割合は逆転しているのです。これは、実際に自治体がやる仕事が多いことを示しています。従って、国経由の移転的支出ではなく自治体の直接の収入とする制度が望ましいのです。次の弊害が指摘されています。
●弊害
a、財源を国がもつことで、財源の配分をめぐって国が地方を支配しがちとなる
b、市民にとって納税と施策の関係がみえにくく、チェックもしにくい。住民自治も発展しない。
●地方税源充実の為には税源移譲が必要
 地方分権をかけ声倒れにしないで本当に実現するには、中央政府から地方自治体に税源が大幅に移譲されなければならないことは、明らかです。
●ピントのはずれた自治体批判・政府財界の主張
 しかし、地方分権の実現のために、税源を自治体に移譲するという考え方を正面から批判する見解が強いのです。二つ紹介します。
(1)財務局(主計局、主税局) 地方が汗をかけ
 補助金を削減し、国税を地方自治体に移譲するように言われるが、補助金の削減は現下の深刻な財政状況の下ではまず借金の返済に充てるべきである。税源移譲では、地方が汗をかくわけでもなく、住民負担もかわらない。税源移譲などを主張する前にまず、超過課税など課税自主権の活用を検討すべきである。
(2)富田俊基 野村総合研究所理事(H2.12.11委員会) 地方ただ乗り論
 92年から計10回、累計規模で136兆円に及ぶ景気対策がおこなわれてきたが、公共事業と減税によるこれらの対策は功を奏さず、政府債務はまれにみる高水準に達した。こうした大規模な景気対策の頻繁な発動・・・は、地方が国にただ乗りして歳出拡大と減税を行うことができたからである。・・・財源を移譲せよと要求する前に、国へのただ乗りで膨張してきた地方の歳出を削減すること、国から地方への税源移譲ではなく、課税自主権の確立とその活用が絶対に必要である。
 ここに、政府財界とあるべき地方分権推進の方向との厳しい対立がよく現れています。
3、この問題を考える基本視点について触れました。
●シャウプ勧告(1949.8.27、勧告の内「地方政府の財政」の項から)の指摘 「地方税制度」
「地方自治機関のための税制をつくるにあたり、若干の基本原則」
a、税制は簡単でなければならない。租税の数は最低に抑え、租税は納税者が容易に理解できる種類のもの。
b、各地方税は有効な地方行政を可能ならしめるものでなければならない。
c、国と都道府県と市町村の間には税源の分離があるべきである。この分離によって、国民は自己に課された税額に対し、またそれらの租税の施行の仕方に対して政治的責任を定めることができる。
d、地方行政単位は、地方選挙民の必要と要求に応じて税率を上下する権限を持たなければならない。
●ヨーロッパ地方自治憲章第9条
a、地方自治体は、国の経済政策の範囲内において、その権限の範囲内で自由に処分しうる十分な固有の財源に対する権利を有する。
b、地方自治体の財源は、憲法及び法律によって定められた責任に比例するものとする。
c、財政力の弱い地方自治体の保護は、・・・財政均等化の手続きまたはそれと同等の措置の確立を必要とする。
d、補助金の交付は、地方自治体がその固有の権限の範囲内で政策的裁量を行う基本的自由を侵してはならない。
●日本国憲法第8章第92条「地方自治の本旨」について
 事務配分の原則(市町村最優先、都道府県優先の原則)にみあった自主財源の保障原則も、団体自治のうちに、従って「地方自治の本旨」に含まれる(杉原泰雄「地方自治権論・再考」より)。

 実際には破綻している日本の中央政府と自治体財政。これを克服する課題と真の地方自治を実現する課題を両立させる、いや、両立させなければ日本の近未来さえ見えてこないというのが実態です。財政は、わかり難い、特に税制は難しい。しかし、分からなければならない。その一歩一歩を、研究所は自分たちの足で歩みたいと思うのです。


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