立川町の風車
次のページ→     2002年7月1日  
6月はじめ、山形地方裁判所酒田支部の事件があって酒田市に出張した。山形新幹線の終点・新庄でおりて、陸羽西線に乗りかえた。2両編成のディーゼルカーで、客も少ない。升形、羽前前波、津谷と各駅に停まっていく。地元の老人会がきれいに花壇を整理している駅、シシウドのような白い清楚な花が群れて咲いて鮮やかな駅、月山をめざすのか山行姿の若者たちが乗り込んでくる駅、と変化を楽しむ。
 津谷駅を過ぎるとまもなく、列車は最上川の渓谷ぞいに走る。ゆたかな水量の速い流れに見とれていると、船下りの観光舟が1、2、3隻とつづいて眼前に現れた。声こそ出さなかったが、密かに歓声をあげる。高屋の駅では、青紫色のてっせん(クレマチス)の花がきりっと美しさをみせてくれた。やがて、山腹の緑をぬって、直接数10メートルも落ちる白く細い滝が目に映る。一瞬、東山魁夷の滝の絵を想い出した。みごとな渓谷美である。
 間もなく、想像もしなかった景色に出あった。右前方車窓に、突然、しっかりと回転する風車の姿がとびこんできたのである。7基もかぞえられる。左車窓の小高い丘の上にも3基の風車が見えた。こちらは羽が止まっている。右側の7基は、列車が近づくにつれ、それぞれますます大きく力強くまわっている。
 列車の位置が変わって理解できた。渓谷の方からみると、理解しがたい風車の群れであったが、間もなく列車が庄内平野に入り、風車が後方に移る。最上川の渓谷から一気に平野が開けるこの地形。逆に見れば、ひろい庄内平野がくびれて漏斗の底のように細くなる最上川渓谷につらなる地形。平野から吹き集まって最上川渓谷に吸い込まれるように流れ込む風を想像することは、難しいことではない。風車は、絶好の位置にあって力強く回っていたのである。
 デンマークでみた風車以上の力感を与えてくれた。感動の風景であった。清川、狩川の駅では近くに見えた風車の群が、南野、余目、北余目と駅ごとに小さくなるのをずっと見送るようにながめ、間もなく終点酒田についた。思わぬ感動を、ありがとう。
 酒田の裁判も無事終わり、温海温泉に泊まって、翌朝もう一仕事すませて帰った。妻に話し、鶴岡出身の友人に話すと、今や、自然エネルギーを利用したまちづくりで有名になっている山形県立川町のことと教えられ、情報に遅れていた自分に気づいた。それも、感動を消すものではなかった。

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