←前のページ     2005年8月1日  

少年法「改正」について

弁護士 木村 真実
1、はじめに
 この原稿を書いている6月20日現在、国会に少年法「改正」法案が提出されています。その内容は、
a, 触法少年やぐ犯少年に対する警察の調査権限を認めること
b, 14歳未満の少年を少年院に送致することを認めること
c, 保護観察中の遵守事項に違反した少年の少年院送致を可能とすること
など、児童相談所の調査機能、児童自立支援施設の「育て直し」機能などを大きく後退させるものです。
2、警察の調査権限の拡大強化
 警察に少年法改正の動きの背景には、触法少年(14歳未満で「非行」をおかした少年)の重大事件が目を引く中、児童相談所や児童自立支援施設での対応では限界があるのではないか、との声があります。
  しかし、触法少年による重大事件の推移を見ると以下のようであり、少なくとも急激に増加したということはありません。一方で同種事件でもマスコミに取り上げられる回数は大きく増えてきており、「重大事件の増加」のイメージは、マスコミや大人の側が作り出しているものと言えます。
期間(年度) 殺 人 強 盗 放 火 強 姦
1955-1964 65 750 3103 694
1965-1974 20 234 2738 341
1975-1984 25 342 2897 243
1985-1994 11 248 1523 116
1995-2004 28 255 1423 90
 そして、重大事件を起こした多くの少年が家庭環境を含む生育歴に問題を抱えており、福祉的な手助けが必要な少年がほとんどです。そこで、従来、警察が触法少年を発見したときには、直ちに児童相談所に通告し、児童相談所が調査することにしてきたのであり、児童相談所が必要だと判断すれば家庭裁判所で家庭裁判所の調査・審判を経ることができることも考えれば、新たに警察に調査させる必要はありません。
 まして、「ぐ犯少年(保護者の監督に服しないなど、将来、法を犯す更衣をするおそれのある少年)」「である疑いのある者」を警察の調査対象とすることは、事実上ほとんどの少年を調査することができ(実際、10−19歳の少年の10人に1人が深夜はいかい等で警察に補導されています)、問題です。
3、14歳未満の少年の少年院送致
 少年院は、「厳しい規律」により少年に規範を遵守する精神を育てるところです。
 しかし、先に述べたように、14歳未満で重大な事件を起こした少年の多くは、被虐待経験など生育歴の複雑な場合が多く、対人関係が苦手で規範を理解する能力も育っていないことが多いのです。このような少年には、「厳しい規律」の前に温かい疑似家庭の中で「育て直し」をすることが必要です。
 僕は、6月22日に国立武蔵野学院を訪問してきましたが、職員の方々は「育て直し」に本当に真摯に取り組まれており、また自信も持っておられました。
4、保護観察中の遵守事項に違反した少年の少年院送致
 現在でも、遵守事項に反したことが新たなぐ犯事由(非行を犯す恐れがあると認められる事由)と言えれば、少年院に送致されることがあります。
 しかし、非行を犯す恐れすらないのに、少年院に送致するということは行き過ぎです。立ち直りの過程には試行錯誤がつきもので、「こういう間違いをしてしまった」と保護司さんに率直に伝え、そのことについて指導を受けることから保護司さんとの信頼関係が生まれ、立ち直ると言うこともままあるのです。
 以上のようなことから、今回の少年法の「改正」の動きは、少年の現状の不正確な理解が前提になっているもののように思えてならず、賛成できません。

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