←前のページ 次のページ→   2003年10月1日  
★日野市の下水道工事疑惑住民訴訟に朗報か
談合に係わる公取委の事件記録を
住民にも開示できるとした最高裁判決の意義
この記事は、ひろばニュース9月号にも掲載されています。 弁護士 木村 真実 
 最高裁判所は、8月9日、談合を追及する住民に対しても、公正取引委員会(以下、公取委)が審判で証拠提出した事件記録を開示できると判決しました。
(1)談合疑惑をめぐる住民訴訟の最大の証拠が「公取委」の記録
 公共事業における談合については、独占禁止法により、公取委が排除勧告や課徴金納付命令を行う権限を有します。不服ある企業が異議を申し立てた場合には、公取委職員が検察官役を担う、刑事裁判類似の審判が開かれます。「課徴金」は罰金に相当するもので、納付命令が正当であることが認められれば国庫に入ります。
 したがって、この課徴金納付命令では地方自治体は談合による損害を回復できないので、談合がなければ下がったはずの額との差額を、被害者として企業に請求することができます。しかし、自治体は腰が重く、住民監査請求があっても請求しないことが多いので、住民が自治体に代わり(代位して)「損害額を自治体に返せ」と訴訟を起こす場合に住民訴訟(地方自治法242条の2)が使われます。
 こうした訴訟の原告・住民にとって最大の証拠は、公取委が集め、審判の場に整理されて出される証拠です。ぜひ欲しいものです。
(2)日野市の住民訴訟にも重大な影響、膨大な「証拠」が法廷に
 日野市内の公共工事でも談合疑惑が相次ぎ、そのうち、市等が新都市建設公社に委託した下水道工事をめぐる疑惑は、住民監査請求を経て東京地方裁判所で訴訟となっています。ここでも、公取委の審判記録をどう扱うかで訴訟手続が事実上止まっていましたが、今回の最高裁決定を受けて膨大な記録が法廷に顕出される見込みで、次回(10月27日11時30分、霞ヶ関の東京地方裁判所606号法廷)以降の裁判が楽しみ。
(3)地方自治法改正後でも、重くなる自治体の責任
 昨年の地方自治法改正により談合で摘発された企業に損害賠償を求める訴訟を起こせるのは自治体に限定されたため、今後は、住民が自治体に企業への賠償を求めることになります。この場合に住民が公取委の審判記録を見ることができるのかどうかは未知数です。いずれにしても自治体の責任が重くなるのは間違いありません。また、多摩ゼネコン談合を含め、地方自治法改正前に提起された事件の判決が自治体の姿勢に影響を与えることも間違いないでしょう。
 日野市民法律事務所の窪田弁護士と私は、多摩ゼネコン談合の原告兼代理人となっている縁で、公取委記録の閲覧が問題となったこの事件で最高裁での弁論を聞く機会がありました。談合による損害を防ぐ役割を最高裁が住民に認めた点は高く評価できると思います。それとともに、住民として今後とも自治体発注の事業をめぐる談合に目を光らせていく必要を強く感じているところです。

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