←前のページ 次のページ→   2003年7月1日  
★「破産者、残せる資産増額」(6月15日付朝日新聞1面)などと大きく報じられている
「破産法」の改正案とは
弁護士 木村 真実 
改正案の三つの柱
 法務省は、今年秋の臨時国会に
1、破産者の手元に残る「自由財産」を現在の21万円から90万円程度に引き上げる 
2、非免責債権の拡大
3、破産手続と免責手続の一本化
等を柱とする破産法改正案を提出するという。以下その要点と解説を述べる。
破産者の再出発に必要な手許金の増額
 (1)破産者は手元にある資産をすべて処分し、債権者に公平に分配した上で残った債権を免除するということが原則である。ただし、破産者は21万円までの現金や生活に欠くべきものについて法律上手元に残せるほか(破産法6条3項、民事執行法131条)、20万円以下の中古自動車、家具などについては裁判所の実務上手元に残すことが許されていた。
 しかし、この「資産を全部処分する」という原則を貫くと、破産者は破産後の再出発が困難になり、新たに借り入れなければ生活できなくなる。そして、破産者はいわゆる「ブラックリスト」(貸し出すと回収できなくなる恐れが高いとしてサラ金等が貸し出しを自粛する対象をリストアップしたもの)に載るので、通常のサラ金等から借り入れることはできず、破産者にターゲットを絞って法律違反の高利で貸しつけて暴力的に取り立てる「闇金」から借り入れることもままある。そうして借り入れると、破産免責後10年間は再び破産免責はしないという規定(破産法366条の9 4号)によりそれらの闇金からの借り入れに苦しむことも多い。
  そこで、法務省は、「資産を全部処分する」という原則を緩和し、90万円程度は手元に残せるようにし、破産者の再出発を容易にしようとしているのである。
養育費の借り入れなど一定の債務は、債務免除から外すことで救済
 (2)破産者の救済という観点からは、破産免責手続を取り終えたら債務はすべて残らないことが望ましい。
 しかし、子の養育費などについてもサラ金からの借り入れと同等に扱うと、破産者より困っている母子家庭の母親がさらに困窮するといったことになる。
 そこで、こうした一定の債務については、免責手続後も免れることができないようにして、バランスを取ろうとしているわけである。
自己破産者の急増に追いつかない「破産手続き」の簡易化を図る
 (3)平成14年の個人の自己破産者は全国で21万人と5年前の3倍にのぼっているが、裁判官や裁判所のスタッフは3倍にはならない。そこで例えば東京地裁では破産手続を代理人だけでできるようにするなど各裁判所で手続の簡易化を進めている。
 しかし、手続の簡易化も法の枠内で行う必要がある。
 そこで、破産手続と免責手続を別個に行うことを要求している破産法を改正して両手続を一本化することにしたのである。
  この一本化により、破産申立から免責決定がおりるまで最短でも3ヶ月前後かかっている時間が短縮されることが期待される。また、現在は、破産を申し立てても免責決定がおりるまでは給料の差押え等を止められないが、一本化後はこうした個別執行ができなくなる。
待たれる抜本的解決策
 このように、法務省が打ち出した破産法の改正は、急増する破産者の増大に対処しようとするものであり、破産者にはもちろん、破産事件の増大になかなか追いつかない当事務所にも朗報だと思います。
 ただ、このような破産者の急増の背景には、景気の回復が進まないなか、派手な広告で貸しつけ高い利息で儲けるサラ金会社や、暴力的な取り立てによって高い収益を確保する闇金の存在があり、これらの抜本的な解決なくしては破産者増大の解決にはならないと思います。

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