←前のページ 次のページ→   2006年1月1日  
●その1
弁護士 山下太郎
●「答えを他人に委ねない」
 先だって,9条の会という,市民の方々が憲法について勉強なさっている会合に出席し,お話をさせていただく機会を得た。
 題目は「公共の福祉」と「公益及び公の秩序」というもので,現行憲法の人権制約原理である「公共の福祉」という概念の考え方と,自民党の「改正」憲法草案に出てくる「公益及び公の秩序」についてどのように考えるべきなのかという,かなり難しいものだった。私が今のところ考えていることを話して来たのだが,市民の皆さんは本当によく勉強なさっていて,私自身も緊張感をもってお話に臨むことができた。
 ひととおり話し終えて,みんなで議論をする時間になったとき,ある人から「現在のような憲法状況にあって,自分たちは一体何をすればいいのか」と言った趣旨の質問をなさった方がいた。私は一瞬悩んだ末,「だれかに『一体何をすればいいのか』という質問をすべきではない。その質問をしてしまうと,一見魅力的な答えを出した誰かにみんなでついて行こうということになってしまう。疑問をもった人それぞれが,それぞれの立場で今できることをするしかない」という趣旨の回答をした。
 正直,質問に対する答えを逃げたかたちになってしまっていることは自覚している。しかし,私自身としては,そのように真剣に考えている。
 以前読んだ本の受け売りで恐縮だが,専制政治は,国難にあったとき,多くの国民が一人のヒーローに対して「この人に任せておけば大丈夫」という,楽をしたがる心理をいだいたところから始まるのだという。たとえ困難でも,皆が風雪をしのぐ屋根を自分で作り,自分で火をおこすところから民主主義は始まるのだ,とも。
 私自身まるで大したことはできていないが,自分で考えることだけは,止めまいと思う。

↑Page Top
Producted by 工房えすと Copyright (C) 2002-3Hino Civic Law Office All rights are reserved.  →このサイトについて