←前のページ 次のページ→   2005年8月1日  
●続編2
弁護士 山下太郎
●「親の利益,子の利益」その1
 弁護士が子どもに関係する事件について依頼を受けて仕事をするとき,そのほとんどは親から相談を受け,親の代理人として仕事をすることになる。
 ほとんどの親は,自分の子どもの事件を弁護士に相談するときに,子どもの利益のことを考えて相談に訪れる。そもそも弁護士に相談するということ自体,普通の人であればよほどのことでない限りしないものであって,弁護士事務所を訪れる人というのは,事態が相当程度切迫している人が多い。子どもの問題を相談に来る親は,どんな事件であれ自分の子どものことを,自分なりに真剣に考えている。
 ただ,この「自分なりに真剣に考えている」というところが,時に『子ども屋』弁護士を悩ませるのである。弁護士として相談に訪れる親子に接すると,親の希望と子どもの希望がずれている,あるいは場合によっては真っ向から対立する場面に直面することがあるのである。
 例えば,離婚して子どもを育てている母親が,父親から面接交渉についての調停の申立を受けて事務所に相談に訪れるという場合,よくよく話を聞いてみると,子どもと父親の関係自体には大きな問題がなかったという場合もある。それでも,母親がどうしても子どもと父親との面接交渉を断りたいという希望を持っている場合がある。
 言うまでもなく弁護士は依頼者の代理人として職務を遂行するのであり,依頼者の利益のために職務を行う義務を負うのは当然である。しかしその一方で,子どものために相談に訪れ,事件を依頼する親の意向に沿うことが子ども自身の利益に反するという場合,弁護士がどのような態度を取るのかは非常に問題である。
 私としては,依頼者である親の言うとおりに事件を処理することが必ずしも子どもの利益とはならないと考えるときには,まずそのことははっきりと伝えたいと思っているし,実際にそうしている。そこで無用に遠慮をせず,問題にきちんと向き合って,言うべきことははっきりと言うことが,最終的には,子どもを思う親の利益につながると考えるからである。そして,親の利益と子どもの利益が反する場合に,その調和を求めて,親と子と一緒に考えていくことが何より大切なのだと,私は思っている。

↑Page Top
Producted by 工房えすと Copyright (C) 2002-3Hino Civic Law Office All rights are reserved.  →このサイトについて