←前のページ 次のページ→   2004年11月1日  
●連載5
弁護士 木村 真実
●虐待だ(文中の事件はまったくのフィクションです。)
Kさん、虐待関係の仕事したことありましたよね。
いやあ、Yさんの方から声をかけてくれるなんて珍しいねえ。この連載の読者もそろそろ不安に思い始めていたところだと思うよ。
  それで、どんな事件?
去年僕が女性側で代理人をした離婚なんですけどね、そのときは、女性も借金を抱えてたり親族の援助が得られない状況だったりして、3歳の一人息子の親権者を夫にしたんですよ。
そのときは納得してたの?
最初は親権欲しいって言ってたし、僕も女性の側について親権をとらなかったの初めてだったから、ずいぶん話したんですけどね、最終的には、調停委員の「お父さんの方が経済的に安定しているし、おじいさん、おばあさんが面倒を見てくれるっていうし」という話に折れたんですよ。
それでその後どうなった?
それがね、離婚後父親がおじいさん、おばあさんのところから子どもを連れて出た上、職を失ったりして不安定になって、子どもに虐待の後が見られるようなんだ。
具体的には?
おじいさん、おばあさんによると、アザがあったり、父親におびえる様子があって、明らかにヘンだって。  
  でも、祖父母や祖父母から話を聞いた保育園の保母さんが子どもに聞くと、「転んだ」とかって。
そうすると、親権者変更の調停を申し立てるか。
うん、保全はどうですかね。
親権者変更を本案にして仮地位(注1)でしょう。必要性は疎明できるのかな。
診断書をとるようにおばあさんに言いました。おじいさん、おばあさんには明日来てもらって事務所で陳述書(注2)を作ります。
お母さんからは話を聞けないの?
お母さんは今別の男性と交際しているんですが、この話を聞いてこの子のために男との関係を清算するって言うんです。その後聞いた方がいいと思って。
でも急がなきゃだよね。お母さんの陳述書ないの不自然だもん。
そうですね。それから、児童相談所にも聞いておいた方がいいですよね。
そうだよねえ。児童相談所が変更した方がいいという判断であればそれも資料になるものねえ。
どうですかねえ、親権者変更の保全と本案、通りますかねえ。
そうねえ、負けると父親を勇気づけることになるし、がんばるしかないよね。
ほかに何か考えておくことあります?
後々の問題になるけど、親権者変更が通ったとしても、父親の方は面接交渉を求めてくるだろう。
でも、会わせたくないですよねえ。
その場合に、手紙などの間接交渉で済むように、面接交渉をした場合の不都合性などの資料を集めることも念頭においておいた方がいいよねえ。
どうです、一緒にやりたくなってきたでしょう。
そういってくれるのを待っていたんだよね。
【用語解説】
注1 仮地位 本来の訴訟を起こし、主張・証明していると取り返しのつかない損害を被る(裁判している間に財産を処分されてしまい、勝ってもお金を手にできないなど)、権利の存在(本訴をしたときに勝てるか)と保全の必要性を疎明(低いレベルの証明)して仮に決定をもらう制度。
    この場合は、仮に親権者とする、ということになる。づけられる。
注2 陳述書 裁判の資料には、大きく分けて主張と証拠がある。本人の経験したことや意見は、陳述書という書面にまとめて証拠化する。  

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