←前のページ 次のページ→   2004年9月1日  
●連載3
弁護士 木村 真実
●少年事件2(文中の事件はまったくのフィクションです。)
この前話していた恐喝の子、少年院送致になっちゃったよ。
審判の様子はどうでしたか。
前の日に会って、少年院の可能性も伝えていたからかもしれないけど、裁判官のいう言葉に納得して、「行ってきます」って。
そうですか。また、少年院を訪ねるようですか。
そうだねえ。両親いなくておじいさんだけじゃ、下手すると誰も会いに来てくれないからねえ。
それで、今日も何かお話があるんですか。
ばれたか。いつも頼みごとばかりで申し訳ないんだけど、昨日、僕当番だったろ。それで、当たったのが少年で、「僕、盗んでません。」っていうわけさ。
盗んでないのは確かそうですか。
うん、混んだ電車の中でもまれているときに隣に立っていた酔っぱらったおじさんの服の内ポケットから財布が落ちそうになったん落ちないように手を添えようとしたら捕まって駅員事務室に突き出されたそうなんだ。
そういうことってあるかなあ。
でも、警察の接見室で彼の言うとおりにやってみると、やっぱり彼の言うとおり、彼は盗んでいないように思うんだ。
いずれにしても、毎日警察に通うようですよね。
そうなんだ。さすがに話が早い。一緒にやってもらえるんだね。
費用は?
お父さんとお母さんは離婚して、お母さんのところにいるんだけど、お母さんは夜の仕事で金ならない。
Kさんに誘われる刑事事件で、金になることは最初から期待してませんけど、それじゃあ、扶助の手続取らなきゃ。
それから、前に万引きが1件あるんだよねえ。
万引きとスリは違うけど、少し気になりますね。
うん、警察では、「万引きしたんだから今回のスリもやったんだろう」って責められているらしい。
実際にその時間の電車に乗って混み具合とか経験する必要がありますね。
そうねえ、明後日の夕方、時間とれない?
6時の後なら
じゃあ、僕はその前に警察に行って、もう少し細かいところまで確認してくるから、撮影用のビデオもって、駅に7時に。
はい。警察行ったら僕の弁選もとってきてくださいね。

【少年事件例2】逮捕から家裁送致まで(例)
某年月日 手続 弁護士
8月15日 逮捕(警察署) 当番弁護士(注1)として接見
    弁解録取、勾留質問の対応アドバイス
    親と連絡(衣類等送ってもらう)
    法律扶助(注2)の申込み
8月16日 弁解緑取(検察庁) 接見
  勾留請求 (逮捕から48時間以内) 弁解録取、勾留質問(注3) 様子確認 今後の取調へのアドバイス
  勾留質問(裁判所)  
8月17日 警察官の取調 勾留状謄本(注4)請求
    接見 
    現場で実験(注5)
    準抗告を書く
8月18日 警察官の取調 両親と会う
8月20日 警察官の取調 接見
8月21日 警察官の取調  
8月22日 警察官の取調 接見
8月23日 実況見分 接見
8月24日 検察官取調べ 検察官に勾留延長せぬよう意見書を書く
8月25日 勾留満期(勾留請求から10日目)  
  家裁送致 この時点で弁護人から付添人へ
  観護措置決定 鑑別所へ 観護措置をとらないよう求める意見書
【用語解説】
注1 当番弁護士 逮捕された人が「とにかく弁護士の話を聞きたい」と思ったときに、弁護士会の待機リストに基づいて、とにかく1回は手続や注意点、弁護士費用について説明してくれるシステム。
注2 法律扶助 弁護士は頼みたいが弁護士費用が用意できない人のために、(財)法律扶助協会というところが立て替えてくれるシステム。
注3 勾留質問 勾留(逮捕後、原則として10日間拘束することを認めること)していいかどうか判断するために、裁判官が被疑者本人に事情を聞くこと。
    勾留が不服な場合、「準抗告」をすれば、別の3人の裁判体で検討し直すことになっている。勾留は検察官の請求を受けてされるが、検察官は勾留を請求する前に被疑者の弁解を聞くことになっている(弁解録取)。捕まっている警察から弁解録取のために検察庁に連れて行かれることを「新件」と言ったりするが、この「新件」までに、警察で被疑事実を示しての弁解録取、身上調書(家族構成、趣味、前科等について書かれる)、事件の概要について書かれる調書などが作成されることが多い。
注4 勾留状謄本 勾留した理由などについて書かれた書類。弁護人はこれを見て勾留の理由を正確に確認し、これに基づいて準抗告をする。
注5 弁護士が集める証拠 弁護士は、警察のような組織を持っていないので、証拠を集めるのはなかなかたいへんだが、再現実験などをしてビデオや写真撮影報告書を作成したり、弁護士が聞き取った内容を書面化したりすることはよくある。

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