←前のページ 次のページ→   2004年8月1日  
●連載2
弁護士 木村 真実
●少年事件1(文中の事件はまったくのフィクションです。)
Yさん、Yさん、今忙しい?
忙しいですって。
それで、その忙しいなか悪いんだけどさ3分だけつきあってくれない?
はい、はい。そう言えば、この前の中学校での弁護士の仕事の話どうでしたか。
うーん、やっぱり聞いていておもしろくなかったみたい。でもさ、消防士さん は火事場で火を消す話、警察官は悪い人を捕まえる話、助産婦さんは子どもを産むときの感動、とそれぞれおもしろそうな話ができるのに、「何で悪い人を弁護 しなければいけないのか」を話すのはうまくないよなあ。
だから、やくざと弁護士はどう違うか、の続きをやればよかったのに。
うーん、来年はもう少し考えてみるよ。とにかく笑いをとりたいよね。
期待されていることは違うと思いますけどね。
それで、今日は、今やっている少年事件(下記例示)なんだけどさあ。
この前引き受けた恐喝ね。
2度ほど鑑別所で本人に話したんだけど、どうも悪いと思っていないみたいなんだよねえ。被害者が中学校の後輩でさあ、自分も中学の時はやられたし、後輩だってカンパがまわってきたら応じなきゃいけないことは分かっていたはずだし・・・っていうんだよ。
その言い方だとほかにもあったりしませんか。
いやあ、今回が初めてだと言っているし、記録上も同種前科は出てきてない。
手紙にさせてみたら考えが深まったりしませんか。
それがさあ、文章を書き慣れていない子でさあ、被害者の子がそれ受け取ったら怒りそうなんだよねえ。
でも、気持ちはこもっているんじゃないですか。
どうかなあ。やっぱ読んだ人がどう思うかが大切だしな・・・。
示談はできないんですか。
それがさあ、お父さんはいなくなっちゃってお母さんも覚せい剤で刑務所に行っちゃって、生活保護受けているおじいさんしかいないんだよねえ。被害額が30万円で大きいしなあ。
でも、全額払えなくても、手紙書いて「もうしません」という気持ちを被害者の子に伝えないと・・・。
そうだねえ。
調査官とは会った?
調査官は、被害弁償もそうだけど、何より帰れる場所がなきゃ、って言うんだよねえ。
おじいさんは?
それがさ、半年くらい前にもバイク盗をやって、そのときも「悪いことはもうしない」って約束したのに、っていうんで、今回は鑑別にも面会にきてくれていないわけ。
半年前のバイク盗って、処分はどうなったの?
裁判所に送られて、在宅のまま調査官が調査していた最中。
えー。それじゃ、今回併せて2件で審判だ。
そうよ。だから、このままだと少年院濃厚なんだよね。
でも、本人反省しているし、少年院は行きたくないって言っているんでしょう。
それに、少年院行くと、確実に学校は退学でしょ。この子、学校卒業したがっているんだよね。それに、少年院出てきてから行く場所がないんじゃ、かえって悪くなりかねないし。
今は休む形にしてるんだっけ。
そう、せっかく学校にもつながっているしねえ。
そうか。審判まであとどのくらいですか。
2週間ちょうど。少年へ働きかけて何をやったか、何が悪かったのかよく考えてもらって、示談の努力して、おじいさんに働きかけて、できること全部やって、場合によっては少年院に行く覚悟もしてもらうようかもね。
そうですね。がんばってください。

【少年事件例1】(付添人)弁護士
7月25日 恐喝事件で逮捕
  当番弁護士として面会
7月27日 勾留
  勾留しないよう求める意見書
  勾留に対する準抗告(不服申立)
  接見
8月6日 観護措置決定 鑑別所へ
  観護措置をとらないよう求める意見書
  鑑別所への面会
  調査官面会
  裁判官面会
8月31日 審判 審判に際しての意見書
【用語解説】
鑑別所への観護措置 心身の鑑別、逃亡防止、罪証隠滅防止等のために少年鑑別所に拘束すること
調査官 社会学、教育学、心理学等の専門家で、少年や家庭等を調査し、裁判官を補佐する裁判所職員
審判 裁判官が、事実を確認して、争いのない事件では1時間前後で1回の手続で処分まで決まる。

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