←前のページ 次のページ→   2003年4月1日  
●連載その10
 オーバーステイという犯罪があります。ビザが切れているのに日本にいたということで、外国人の刑事事件の多くがオーバーステイです。 
 オーバーステイ中に自ら入国管理局に出頭すると、原則としてしばらくの間入国管理局に収容されて違反事実の調査などがなされた後、強制送還されます。だから、僕たちが警察署で会う人たちは他の犯罪を疑われたか、たまたま職務質問にあった(そうすると旅券不携帯で逮捕される)人がほとんどです。
 この「たまたま」で逮捕されたりされなかったりが決まるのはとても理不尽だと思うし、接見で「なぜ自分は逮捕されなければいけないのか」と訊かれることも多いのですが、逮捕される場合があることをわかっている外国人も多いのです。Aさんもそうした1人でした。
 それでも外国人は逮捕されるとたいへんです。まず、連絡がとれなくなった外国の家族に自分の状況を伝えたいと思います。Aさんのお兄さんは以前日本に滞在したことがあり日本語は達者でしたが、逮捕されないまま帰国したので、弟の逮捕を知らせると驚き、その後事務所にイランからの国際電話が度々かかってきました。
 次に住んでいたところの問題が出てきます。逮捕されて住まなくなった以上荷物をどけて明け渡さないといけないのですが、突然のことなので、置いてくれるところの手当はできていません。敷金の精算なども曖昧になってしまいがちです。
 さらに職場との関係もあります。多くの外国人はまじめに働いているので、職場の方が上申書を書いてくれたりするのですが、働いていた建設会社に未払賃金の請求の裁判をしてくれと言われたこともあります。
 それから日本人の恋人ができたので、どうしても日本を離れたくないという相談もあります。在留特別許可という手続について説明することになります。
 刑事弁護人としては、オーバーステイ犯罪とされていることや手続の流れについて説明し、裁判の場で本人に有利な事情が出るように努力するわけですが、オーバーステイの事件は、どこまでが刑事弁護人としての仕事かわからない相談が多いのです。

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