←前のページ 次のページ→   2002年12月1日  
●連載その6
僕が、疑われているとおりです、と認めた人の弁護で、重視することの4つめは、病気からの回復です。
 覚せい剤の自己使用は病気です。タバコをやめた人はずいぶん辛い思いをしたと思いますが、覚せい剤はやったときの快感が強いだけに、やめるのは本当に難しいようです。アル中の人が酒をやめる辛さに似ています。
 Eさんは、覚せい剤の自己使用で逮捕されました。覚せい剤はやめられないまま何度も逮捕される人が多いのですが、Eさんは初めての逮捕で、多分執行猶予の判決が出るだろうと考えられました。問題は、執行猶予判決で社会に戻ってから、2度と使用しないためにどうしたらいいかです。アル中の人は精神科などで治療の対象になるのに、社会は覚せい剤の使用を病気と考えていません。犯罪であるが故に判決までは警察署などに勾留され、法廷で「もうやりません」と言って執行猶予判決が出ると社会に戻されます。
 法廷では、意志の弱さが責められますが、何らかのきっかけで覚せい剤を一度打つと、通常の意志の力では2度目は止められません。
 そんなやめたいけどなかなかやめられない人たちが「今日1日やらないこと」を目標に集まって、励まし合いながら暮らしている施設があります。
 Eさんにも「気持ちだけではやめられない」と話して、そんな施設を検討したり、両親との話し合いなどを重ねたりしました。Eさんは、もう大丈夫、2度とやらない、と繰り返しました。自分では真剣にそう思っていたと思います。しかし、僕は不安でした。2度、3度と社会と刑務所の間を往復する人が、1度目の逮捕の時は同じことを言っていたことを知っているからです。そこで、初めて覚せい剤を使ったのはなぜなのか、その後使い続けたのはなぜなのか、これからどうすればやめられるのか、などを徹底的に見つめ直し、長い長い文章にしてもらいました。
 予想どおりの執行猶予判決の後、Eさんは自宅に戻りました。もう一度覚せい剤の誘惑にあったとき、自分が留置場で書いた長い長い文章を思い出してくれることを願っています。

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