←前のページ 次のページ→   2002年11月1日  
●連載その5
僕が、疑われているとおりです、と認めた人の弁護で、重視することの3つめは、動機の解消です。
 Dさんは、暴力団関係の犯罪で前に刑務所から出てきた後、仕事が見つからないまままた誘われて組員になってしまいました。今回逮捕されたのは、サラ金で借りた金で覚せい剤を買っていた上、遊ぶ金欲しさに他人名義のカードでサラ金から金を借りようとしたという詐欺未遂ということでした。
 刑務所に行ったことがあるDさんは、今回も刑務所に行かずに済みそうにはありません。でも、今度を最後にするためには、何としても暴力団との縁を切らなければいけません。
 Dさんには、暴力団との関わりを中心に10年位を振り返ってもらい、何が間違っていたのか、これからどうすればいいのかを何度も話し合いました。そして暴力団については脱会届を書いて警察署に提出し、サラ金については自己破産の手続をとることにしました。
 お金に困って犯罪を犯してしまった人について、自己破産の手続をとることによって次の犯罪防止に結びつけることはそれほど難しくないと思います。しかし、若いころに暴力団に入った人が、暴力団との縁を切るのは、なかなかたいへんです。一度暴力団に入ると、どうしても刑務所に行くことが多くなります。そして、刑務所に行った人に対する社会の評価は厳しく就職は難しいのに対し、暴力団では箔がついたとして歓迎されるからです。
 この世界に入るまであまり触れることのなかった暴力団の世界ですが、話を聞いてみると、暴力団の世界なりの義理人情があり、その世界の人にとっては生きやすいことも多いようです。暴力団から抜けることは、それを妨げようとする人間関係だけでなく、生きやすさから離れたくない自分との闘いでもあります。それだけに、暴力団から抜け、生きにくい世の中でがんばっている人たちは応援したくなります。
 Dさんも今度こそ生きにくい世の中で生きていってくれることを願いつつ、出てくるのを家族と一緒に待っているところです。

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